秋頃の話になるが、僕の妻が庭(と言うより、借家の隣りにある僕が購入した更地の区画)の草むしりをしていたら、雑草や土に埋もれていて見えなくなっていたマンホールのフタを発見した。
IMG_20220126_102903
 この土地は、分譲当初から今日に至るまで建物が建てられたことはなく、造成されてからそのまま放置されて半分雑木林と化していた土地である。古い航空写真を見ると、この分譲地は、造成前は養魚場の生け簀だったようなので、マンホールは宅地造成時に設置されたものであることは間違いないが、分譲から35年、その存在を誰にも気が付かれることなく土に埋もれ続け、今回初めて発掘によってその存在を知られたものである。
IMG_20220126_102921
 この分譲地は用水路に面している。用水路の、僕の土地側の側壁に、どこから繋がっているのかよくわからない排水口があることは以前から知っていたが、位置関係から見て、この排水口は、妻が発見したマンホールと接続されていることはほぼ確実と思われた。しかし、何のために埋設された排水口なのかはまったくわからない。IMG_20211129_125346
 この用水路の登記簿を見ると、所有者は旧建設省になっている。建設省や内務省など、現在は廃止された旧省庁名義の国有地は、地元自治体が管轄していることが多いと思うが(財務省や地方整備局の場合もある)、自治体も予算や人員に限りがあるので、強く陳情でもしない限り基本的に管理もせず放置したままだ。この用水路も、誰が事実上の管理者にせよ、草刈りひとつ行われずほったらかしにされているのが現状である。

 しかし、仮にも国有地の、それも農業用の用水路に、宅地からの排水口を接続する工事が果たして認められるものなのだろうか。
水路
 この分譲地を造成した開発業者はもちろん倒産しており、造成工事に関する資料は、分筆登記時に提出された地積測量図以外になにも残されていない。開発当時、ここは合併前の旧匝瑳郡光町であったが、その光町も今は消滅し、この用水路に関する資料が行政に今も残されているかも不明だ。自治体は、民間の開発分譲地の排水インフラの詳しい内情や位置関係、資料などは一切持ち合わせていないのが普通である。
IMG_20211129_125351
 否、もう少し都市計画に対して熱心な自治体であれば、開発業者と折衝を重ね、事業計画書を提出させて吟味したりするのかもしれないが、北総の限界分譲地は、この土地を安くゲットしたのでとりあえず造成して分譲しちゃいましたー!あとはヨロシク!みたいな感じの、計画性のかけらもない乱開発の産物ばかりなので、自治体側もその実情をなにも把握していない。

 信じられないかもしれないが、仮にそこが公道であったとしても、その下に埋まっている民間業者が敷設した排水管などについて、行政は詳しい情報を持ち合わせていないことも多々あり、古い宅地に新たに住宅建築を行う際に、業者自身が現地や近隣住民への聞き取りなど、あれこれ調べ回って排水管や、側溝への接続の有無を調査したりする。事程左様に当地の都市開発は無計画の極みと言っていいのである。
fda2949e
 バブル期以前の民間業者のインフラ工事はきわめてお粗末で、一応形ばかりのU字溝が埋設されてはいるものの、その先はどこの排水施設にも接続されておらず、分譲地の外で垂れ流しになっていたりする。見てくれだけの専用水道を設置してあるものの、結局1度も使われることもないまま放置され、ただ給水塔の残骸が残るだけで、住民は個別井戸を設置して生活用水を確保しているところもある。
f3e1b228
 こういった限界分譲地に埋設されているはずの、未利用の老朽化してるであろう水道管についても、当然ながらなんの資料も残されていないので、住民ですらどこに水道管が埋設されているのか詳しく知らない場合もある。

 やがて将来、こうした地中の老朽埋設物が陥没し、地盤沈下や道路の損壊の要因になってゆくのだろうか。繰り返すが、誰も何もわからないのだから対策のしようがないのが現実である。我が家の庭のマンホールのように、偶然による発見と対策を期待するしかない。
IMG_20210916_113443